手が震えるのはなぜ?
脳の神経に障害が起こると、手が小刻みに震える(振戦)ことがあります。
代表的な原因は「大脳基底核」や「小脳」と呼ばれる部分の働きの乱れです。
- 大脳基底核の障害では、パーキンソン病に見られるような安静時の震えが出ます。
- 小脳の障害では、コップを持つなど目的の動作をしようとした時に震えが強くなる「企図振戦」が見られます。
どちらも「動きを滑らかに調整する神経回路」がうまく働かなくなるために起こります。
力加減ができない理由
脳は、筋肉や関節から送られてくる感覚情報をもとに「もう少し弱く」「もう少し強く」と力加減を調整しています。
このとき中心的な役割を果たすのが 小脳 です。
しかし小脳や感覚神経の経路に障害があると、
- 強く握りすぎる
- 力が弱すぎて物を落とす
といった現象が起きます。
つまり、力加減の不調もまた「神経の調整役」がうまく働かないことで起こるのです。
ミトコンドリアとの関係
ここで重要なのが、細胞の“電池”である ミトコンドリア です。
- 脳の神経は非常にエネルギーを消費します。
- ミトコンドリアの働きが弱るとATP(エネルギー)が不足し、神経の信号が乱れやすくなります。
- その結果、震えや力加減の不調が強く出ることがあります。
特にパーキンソン病では、ミトコンドリア障害によってドーパミン神経がダメージを受けやすくなることが知られています。
また小脳の神経細胞もエネルギー不足に弱く、協調運動障害や力加減の不良につながります。
まとめ
- 手の震えや力加減の不調は、脳神経の「調整回路」の障害で起こる。
- その背景には、神経細胞のエネルギーを作る「ミトコンドリア」の働きが深く関わっている。
つまり、神経の乱れ × ミトコンドリアの力不足 が合わさって、症状が現れていると考えられます。
患者さんに説明するなら、
「震えや力の調整ができなくなるのは、脳の調整役がうまく働かなくなるからです。さらにその裏側には、神経を動かすための“電池”であるミトコンドリアの力不足も隠れています」
と伝えると、理解しやすいと思います。